更新日 : 2015/03/29

2015年度シンガポール予算案

2月23日にターマン副首相兼財務相より2015年度政府予算案が発表されました。

そのうち、日系の中小企業の関心が特に高いと思われる項目について以下にまとめます。

 

1. 法人税の税額控除(限度額変更)

2013年度予算案において、YA2013からYA2015について

30%(上限3万ドル)の税額控除が発表されましたが、

2015年度予算案ではYA2016からYA2017について

限度額を2万ドルに減らした上で30%の税額控除が適用されます。

(YA:Year of Assessment、賦課年度)

 

2. Wage Credit Schemeの改定

従業員に対する利益還元を奨励するため2013年予算案で導入された制度ですが、

2016年と2017年については昇給額に対する補助金支給額の割合が

40%から20%へ改定されました。

対象は月額4,000ドル以下のシンガポール従業員です。

 

3. PICボーナスの廃止

PICスキームとは中小企業による投資を促すために導入された制度であり、

研究開発費や研修費用、ソフトウェアに対する支出等の投資(適格支出)について

400%の損金算入が認められます。

 

PICボーナスは、既存のPICスキームに加えてPIC適格支出の100%の現金を

(YA2013からYA2015で合計S$15,000を上限として)支給していましたが、

当初の予定通り、延長されることなく廃止されました。

 

4. 国際化スキーム

IEシンガポールより認定を受けたシンガポール法人は、

海外進出において生じる費用(展示会の費用など)について

二重税額控除(200%損金算入)が認められていますが、

100万ドルを上限に人件費も適格費用として含まれることになりました。

 

5. M&Aスキーム

シンガポールにおけるM&Aを奨励するために、

2015年3月までの5年間という期限で導入された制度ですが、

2020年まで延長され、内容も中小企業向けに改正されました。

 

a) 買収金額の25%損金算入(5% -> 25%) 上限500万ドル

b) 印紙税免除(上限20万ドル -> 4万ドル)

c) 買収前と買収後の株式保有割合の条件(20%未満、50%未満)

 

6. 国際成長スキームの導入

シンガポールを拠点として海外に進出する企業の成長支援を目的とした制度であり、

IEシンガポールが管轄しています。

認定を受けた企業は10%の優遇税率を最長5年にわたって享受できます。

 

7. GST

GST課税業者登録以前6ヶ月以内に発生したGSTについて、

全額が仕入税額控除の対象となり、還付を受けられるようになりました。

 

8. 個人所得税

個人所得税は約30年にわたって引き下げられてきましたが、

YA2017より最高税率が22%に引き上げられます。

16万ドル以下の所得については税率の変更はなく、

上位5%を占める高所得者に対して増税することで

高齢化によって増加する見込みである社会保障費の財源とする狙いです。

 

9. CPF(年金制度)

2016年以降、CPF拠出額の計算対象となる月額給与の上限が

S$5,000からS$6,000へ引き上げられます。

また、51歳以上の法定拠出率も同時に引き上げられます。

 

10. 寄付金控除の延長・拡充

2009年度予算案において2015年まで寄付金の250%を損金算入できましたが、

250%の寄付金控除は2018年まで延長され、さらに建国50周年を祝して

2015年に行われた寄付金については300%を損金算入できるようになりました。

 

11. 外国人労働者税

外国人労働者税は、Sパスおよびワークパーミットの従業員を採用する雇用主が

毎月支払うものであり、外国人労働者の需要を調整する機能を有しています。

 

2010年から段階的に引き上げられてきましたが、

外国人労働者の流入が鈍化したことにより、

2015年7月に予定されていた増税が1年延期されました。

ただし、「労働力への依存を減らし、革新的ビジネス手法を

模索するという方向性は変わらない」と強調されています。

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